いつのころからか、わたしに寄り添うようにこのタイル画がある。
わたしの手元におそらくもう60年近く、ある。
記憶をたどると、小学生の頃の妹の誕生日パーティーで友だちから妹がもらったプレゼントの一つだったようにも思う。もともと、このタイルの淵には黒いプラスティックの枠が付いていた、かもしれない。
プラスティックの枠も取れて不要物のたまり場のような箱に入っていたのを、わたしが見つけて引っ張り出してきた。以来、ずっと私の手元にある。
お嫁に行く時も知らない間にわたしのところにあった。
わたしは、なぜだか、この詩が好きだったのだなと、いまさらながらに思う。
この詩に惹かれて、この挿絵も好きで、捨てられずにずっと持っていたのだろうなと思う。
そして、わたしは、なぜかずっと、この詩と挿絵はやなせたかしさん作だと思っていた。
まだ、あんぱんまんで人気作家となる前は、どちらかというとメルヘン作家のイメージが強い”やなせたかしさん”だった。
あの頃は、雑誌「詩とメルヘン」の仕事をする、詩とイラストの作家、やなせたかしさん、と思っていたように思う。
しばらく経ってから、学校で歌った、「手のひらに太陽を」の作詞はやなせたかしさんだったのだと知ったように思う。
そんなわけで、ずっとずっと、この、わたしの手元にあるタイル画はやなせたかしさん作だという思いが、空気のように私の頭に入り込んでいた。
今月から、NHK朝ドラでやなせたかし夫婦の物語が始まったとき、あらためてタイル画をながめた。
ん?詩の最後に書かれたサインが、やなせたかしさんの名前ではない!、ということに初めて気づいて、驚いた。
mon. かな。moh. かもしれない。
このサイン、だれだ?
ひとつぶの涙で
悲しみが 忘れられるなら
ひとつぶの涙で
幸せがやってくるなら
たくさん たくさん
涙をこぼそう
大きな夢が かなうように
ピエロの格好をした男の子と、赤いワンピースを着た女の子が、ぽろぽろと涙を流している。悲しそうでもなく、笑ってもなく。
わたしのたいせつなタイル画の話でした。
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